この世界から、カラオケも夏フェスも消えてなくなればいいと思ってた。

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この世界から、カラオケも夏フェスも消えてなくなればいいと思ってた。

ぼくは小さい頃から「恥ずかしい」という感情が先立つ子供だった。

どんなにワクワクしても、

どんなに興味があっても、

どんなに得意なことでも、

「恥ずかしい」という五文字が、あらゆることへの挑戦をジャマしていた。

 

カラオケに行くと眠くなる病

初めて好きな女の子とデートした高校2年生の冬。

恥ずかしくてその子の顔を直視できなかったので、帰った後どんな服を着ていたかさえ思い出すことができなかった。

人前で歌うことも無理だった。

友達と遊んでいてカラオケに行くことになった時は、部屋に入った途端にソファーで爆睡を決め込む超絶ノリが悪いヤツだった。

「おれも歌わないから安心して」という友達のセリフを信じてたのに、だんだん盛り上がってくるとその子の歌声が聞こえてきた。

寝たフリをしながら3時間耐えるのが苦痛でたまらなかった。

そんなクソめんどくさいまま社会人になったので、はじめは苦難の連続だった。

200人規模のパーティーで司会を任されたり、同僚の前でカラオケを歌わされたり、恥ずかしいなんて言ってらんない場面は数えきれなかった。

そのおかげで、学生の頃は楽しめなかったことを楽しいと思えることが増えた。

すると、自然と周りに人が集まってくるようになって、学生時代一度も話さなかった子と友達になることも多くなった。

今では、ときどき友達にこうからかわれる。

「ひろきは、今みたいにオープンだったら学生時代もっと楽しめただろうね。」

 

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カラオケは倒した。ラスボスは夏フェス。

会社員時代に鍛えられたおかげで、今のぼくはすっかりカラオケが好きになった。

ただ、いまだかつて倒したことのないラスボスがいた。

それが、夏フェス。

タオルをぐるぐる回す?

両手をバンザイして左右に揺れる?

シャボン玉を飛ばしてフェスを彩る?

ビビットなカラーのハットを被る?

恥ずい。

そんな恥ずかしいこと、ぼくにはできない。

その恥ずかしさといったら、銭湯の脱衣場でちんちんをドライヤーで乾かすオッサンに匹敵する「そんな恥ずかしいこと、ぼくにはできない」だ。

そんなぼくを試すかのように、ぼくの大好きなハンバートハンバートという歌手が夏フェスに参加することを知った。

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(引用:http://mokkiriya.seesaa.net/article/200699690.html

そこで、高校3年生の時にチャリで沖縄まで行った親友、松本くんを誘った。

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ぼくもさることながら、松本くんの夏フェスに対する偏見もなかなかエグい。

というわけで、ぼくら二人は、

・決してカラダを左右に揺らさず、

・決してシャボン玉でフェスを彩らず、

・決して麻ズボンとハットは装備せず、

純粋にハンバートハンバートの歌を聴くために、人生初の夏フェスに参戦することにした。

 

フェスを一番楽しんでいるのは誰?

夏フェス当日。

最寄の駅前にあった古ぼけた商店でビールを買って、緊張をほぐすように二人は足早にカンパイした。午前10時半のことである。

フェス会場に近づくにつれて、徐々にパチンコ屋のような喧騒に包まれるのを恐れていた。

でも、

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なんか、

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想像とは裏腹に、

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ゆるい雰囲気だった。

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途中、この中で一番フェスを楽しんでいるのは誰だろうという話になった。

その結果、ぼくらが晴れてノミネートしたのは・・・

パートナーそっちのけで揺れまくってた人と、

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すべてを放り出してしまった人のふたりだ。

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途中、絵に描いたようなリア充団体にも出くわした。

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なんか、自由なんだな。フェスって・・・。

 

主役のハンバートハンバート登場

フェスは、お洒落なハットもかぶらないぼくらを決して軽蔑しなかったし、ただ海辺でお酒を飲んでるだけでもすごく居心地が良かった。

そう感じた理由は、決して音楽ファンだけが集まる場所ではなく、多種多様の目的をもった人たちが集結していたからだろう。

他人の目を気にしているのはぼくらだけだった。

そして、ようやくお目当てのハンバートハンバートが登場した。

ぼくらは初参加の分際で最前列を陣取るようなマネはできなかった。

ビール片手に、背伸びもせず、最後列の柵にもたれかかりながら、5年間イヤフォンで聴き続けたハンバートの歌声をかすかに拾っていた。

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今までに、ハンバートハンバートの歌声は500回以上聴いていると思う。

でも、その全てが機械を通した間接的な声であって、直接聴くのはもちろんこの日が初めて。

彼らの代表曲「おなじ話」のイントロが流れた直後、それを察したファン達の歓声が上がった。

 

そのとき、

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なんか感情が抑えきれなくなって、

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胸が熱くなって、

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ぼくは完全に号泣した。

ハットをかぶったり、

シャボン玉を飛ばしたり、

麻のズボンをはくことが、

恥ずかしくてできるか!と避けてきた結果、それ以上に恥ずかしい場面の一部始終を松本くんに激写されていた。

アーティストってすごいよなぁ。

こんなクソめんどくさいヤツを一発で泣かせるって、どんな力秘めてんだよ?

人前で泣いたのなんて、高校3年の部活の夏の大会に負けた時以来だよ。

ハンバートハンバートの曲が終わった後は、夕暮れ時の淡い西日も、遠くに聴こえる名前も知らないアーティストの歌声も、すべてがロマンチックに映った。

ぼくたちの周りでビール片手にカラダを揺らしている大人達が、人生の楽しみ方ってヤツを熟知した大先輩のようにみえた。

これが夏フェスの威力なのだろうか。

やばいなにこれめっちゃ楽しい帰りたくない。

次のフェスいつどこでやんのぉぉぉおお!!!

 

人生は「楽しい」と思えたモン勝ち説。

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これからの時代は、人類が未だ経験したことのない激変期を迎えるだろう。

その中でも最も変化がめざましいのは、テクノロジーの進化だ。

人間がつまらないと思う作業、苦痛を伴う仕事は、すべてロボットに代替されていく。

そこで生き残れる人間は「遊びが仕事になった」人間だ。

純粋に「楽しい!」と感じる好奇心が、いつの間にか仕事になり、その仕事で他人を喜ばせることができる人間だけが進化していく。

とすれば、何事も楽しめる人間が最強だ。

他人になんと思われようが「楽しい!」と思える機会の多い人間ほど、多くのチャンスを手にするに違いない。

千載一遇のチャンスが訪れた時に、やれ恥ずかしいとか、やれ今は時期じゃないとか、

そんなクソどうでもいい見栄で機会損失することの方がよっぽど恥ずかしいじゃねーかよ。

そんなことをぼんやり考えながら、ほろ酔いで電車に揺られて帰路に着いた。

人生初のフェス会場に入るとき手首に付けたバンドは、自分の中の「恥ずかしい」という感情を乗り越えた勲章のようで、なんだか誇らしい気持ちになったよ。

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